
こんにちは。
東京文京区護国寺にある、広報誌の企画から取材撮影、編集デザイン、文字校正、印刷&Web展開までトータルでお手伝いしている株式会社ユー・エス・エスです。
(今回のブログは、職場体験に参加された方が書いた原稿をもとに、USSスタッフが再構成しました。)
11月のアメリカは、一年で最もあたたかな空気に包まれる季節。
家族や友人がテーブルを囲み、七面鳥を焼き、感謝の言葉を交わす──それが「Thanksgiving Day(感謝祭)」です。そしてその翌日には、一転して街が熱気を帯びる「ブラックフライデー」がやってきます。
このふたつの行事、実は“対極”のようでいて、同じ根っこを持っているのをご存じでしょうか。
それは「贈る」という文化です。
感謝祭の起源は、1621年。
アメリカ・マサチューセッツ州プリマスに入植した人々が、初めての収穫を先住民とともに祝ったのが始まりと言われています。
厳しい冬を乗り越えるために助け合った一年、その恵みに“Thank you”を捧げる──
つまり感謝祭は、宗教行事である以前に「人とのつながりを祝う日」なのです。
テーブルに並ぶ料理にも、それぞれ意味があります。
七面鳥は「繁栄」、クランベリーソースは「友情」、パンプキンパイは「家族の絆」。食卓を囲む行為そのものが「一緒にいる幸せ」を象徴しています。
この“感謝”の文化が、翌日のブラックフライデーへとつながっていきます。
「ブラックフライデー」と聞くと、日本では“セールの日”という印象が強いかもしれません。
けれどもアメリカでは、本来「ホリデーシーズン(感謝祭からクリスマスまで)」の始まりを告げる日です。
家族と過ごした翌日に、プレゼントを買いに行く。
誰かの笑顔を思い浮かべながら、贈りものを選ぶ──
そんな“準備の時間”が、ブラックフライデーの原点でした。
小売店が黒字(Black)になるほど売上が伸びたことからこの名がついたとも言われますが、もともとは「家族や友人への贈りものを考える季節が始まる日」。
消費ではなく“想いを動かす日”だったのです。
アメリカの11月には、見事なリレーがあります。
「Thanksgiving」で“感謝”を伝え、「Black Friday」で“贈りもの”を選び、「Christmas」で“想い”を渡す。それぞれの行事が、人と人を結ぶ物語になっているのです。
この流れを知ると、ブラックフライデーも単なるセールではなく、
“感謝の延長線上にある行動”として見えてきます。
「ありがとう」を言葉で伝えた翌日に、“形のあるありがとう”を探しに行く。
そんな優しい循環が、長く受け継がれてきたのです。
日本でも近年、ブラックフライデーが定着してきました。
大型ショッピングモールやECサイトのセールが話題になりますが、本来の意味を思い出すと、ちょっと見え方が変わってきます。
たとえば、仕事でお世話になった方に小さなギフトを贈る。
取引先や同僚に手書きのカードを添える。
そんな“気持ちを届ける習慣”も、ブラックフライデーや感謝祭の精神に通じています。
贈りものは、金額や大きさではなく、想いの濃さで記憶に残るもの。
この季節に改めて“感謝をかたちにする”ことを考えるのも、広報やデザインの仕事に通じる部分かもしれません。
私たちの仕事もまた、“伝える”というかたちで想いを贈っています。
広報誌のタイトルを選ぶときも、パンフレットの構成を考えるときも、その根底には「誰かに届いてほしい」という願いがあります。
感謝祭やブラックフライデーが教えてくれるのは、“誰かを思い浮かべる時間”の尊さ。
それが、贈る文化の原点なのだと思います。
アメリカの家庭が感謝の言葉を交わすように、
私たちの仕事もまた、「伝える感謝」を重ねることかもしれません。
言葉やデザイン、写真を通して届けるメッセージは、
まるでプレゼントのように、人の心をあたためる力を持っています。
プレゼンテーション(presentation)という言葉の中には、
“プレゼント(present)”という意味が隠れています。
誰かに想いを届けるという点で、二つは同じなのかもしれません。
この11月、あなたの言葉や表現にも、
“ありがとう”の気持ちをひとつ、添えてみませんか。