※本記事は、東京しごとセンター(女性しごと応援テラス)の再就職支援プログラムの職場体験に参加された方が書いた原稿をもとに、当社にて構成・表現を整えて掲載しています。
2月になると、ふと胸の奥があたたかくなる。
それはきっと、昨年の今ごろ、南インドを旅していたからだと思う。
日本ではまだ冬の名残があり、コートに身を包みながら春を待つ季節。
一方、南インドは乾季のまっただなかで、空は高く、風は軽く、身体が自然とほどけていくような気候だった。
一年たった今も、2月の光を感じるたびに、あの土地の色や匂い、そして自分の心の変化を思い出す。
南インドの2月は乾季で、湿度が低く、とても過ごしやすい。
日本の寒さから抜け出した身体に、じんわりと染み込む太陽のぬくもり。
暑すぎず、動きやすく、旅をするにはちょうどいい季節だ。
観光地としてもベストシーズンにあたり、ヨガやアーユルヴェーダを目的に訪れる人も多い。
「整える旅」をしたい人にとって、2月の南インドは理想的な場所だった。
旅の前半は、シヴァナンダヨガのアシュラムでの滞在。
早朝の起床、決まった時間の瞑想とヨガ、シンプルな食事。
そこには、私たちが日常で慣れ親しんでいる「自由」とは違う、規律ある時間が流れていた。
最初は戸惑いもあった。
スマートフォンを見る時間もほとんどなく、外界の情報から切り離される感覚。
けれど、数日たつと、不思議なほど心が静かになっていく。
ヨガや瞑想が、単なるエクササイズではなく、何千年も続いてきた「生き方」そのものなのだと、身体で理解していく時間だった。
旅の後半は、ケララ州のビーチへ。
アラビア海(インド洋)に沈む夕日を眺めながら、ただ波の音に耳を澄ます。
ここでは、アーユルヴェーダのトリートメントも体験した。
体調や体質を丁寧に診てもらい、その人に合った施術を受ける。
「治す」というより、「本来の状態に戻す」感覚。
自然治癒力を信じ、引き出すという考え方に、深く心を打たれた。
実は旅の途中で体調を崩してしまったのだが、診察とケアを受け、翌日には驚くほど回復した。
身体が「ちゃんと応えてくれた」感覚が、今も忘れられない。
インドは、私にとって「いつか行きたい国」だった。
人生観が変わる、とよく聞くけれど、本当なのだろうか。
少し疑いながらも、どこかで期待していた。
結果から言うと――変わった、と思う。
神様とともにある生活、自然の力を信じること、心と身体を切り離さない思想。
ヨガや瞑想の背景にある歴史や教えに触れ、世界の見え方が少し変わった。
「すべてをコントロールしようとしなくていい」
そんな感覚が、帰国後の日常の中でも、静かに息づいている。
インドに行くと言うと、必ず聞かれる。
「大丈夫?」「女性一人で危なくない?」
確かに、日本とは違う文化や環境がある。
それを怖いと感じるか、学びと感じるかは、人それぞれだと思う。
今回の旅では、事前の注意や現地での配慮が行き届いていて、ヒヤッとするような経験はなかった。
郷に入れば郷に従う。
その姿勢があれば、世界はもう少しやさしく開いてくれるのかもしれない。
日本に帰ってから、なぜかインドが恋しくて仕方なかった。
ふとした瞬間に、あの空気を思い出す。
旅の記憶というのは不思議なもので、時間がたつほどに角が取れ、
今の自分をそっと支えてくれるものになる。
あのとき見た空の色、波の音、静かな朝の呼吸。
それらは今も、私の中で静かに息をしている。
こうした「心に残る体験」を、言葉にして誰かに届けること。
それは簡単なようで、案外むずかしい――
私たち株式会社ユー・エス・エスは、東京都文京区にあるデザイン制作会社です。
取材・編集・デザインを通して、体験や想いを、無理のない言葉と形に整える仕事をしています。
この記事も、そんな編集の現場から生まれた一篇です。
読む人の中で、そっと何かが残る文章になれば、うれしく思います。