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◆ビジネスと人権【第5回】「人権って“リスク”なの?」 信頼を築く“備え”としての人権対応

「人権って“リスク”なの?」 信頼を築く“備え”としての人権対応

「人権に取り組むのって、社会貢献みたいなものでしょ?」
そう思っている方も、まだ少なくないかもしれません。ですが、いま企業が“人権”を意識すべき理由は、それだけではありません。

今回は、人権への取り組みが“経営リスクの回避”や“企業価値の向上”につながることをテーマにお話しします。

■ 「人権」と「企業リスク」がつながる?

人権と企業リスク──一見、遠い話のように見えるかもしれません。

でも実際には、人権に関わる問題が表面化すると、企業は以下のような申告な影響を受ける可能性があります。

⚠️ 企業が直面する4つの主なリスク

リスクの種類内容
レピュテーションリスク企業の評判の悪化、SNSや報道での批判、信用の低下
法的リスク労働基準法違反、行政指導、海外での訴訟
財務リスク株価下落、取引停止、投資撤退
業務継続リスク労使トラブル、ストライキ、納期遅延など
企業が直面する4つの主なリスク

人権問題は、「知らなかった」では済まされない時代です。
むしろ、“どのように対応したか”が企業の信頼を左右します。

■ 対応しないとどうなる? リスクが顕在化する流れ

対応を怠ると、こんな“負の連鎖”が起こり得ます。

1️⃣ 下請け企業で過酷な労働条件が発覚
  ↓
2️⃣ NGOが報告書を公表
  ↓
3️⃣SNSやメディアで一気に拡散
  ↓
4️⃣消費者・投資家・取引先から批判
  ↓
5️⃣ 商品の撤去・契約の見直し・投資撤退が発生

自社が直接関わっていなくても、「この会社が関わっていた」とみなされるのが現実です。

■ “先に備える”企業が選ばれる

ここで大切なのは、問題が起きてから慌てて対応するよりも、前もって備えておくことです。

  • 人権方針を策定し、社内外へ公表する
  • サプライチェーン全体を定期的にチェックする
  • 通報窓口や相談体制を整備する

こうした備えが、いざというときの対応力と企業の信頼性の向上につながります。

実際に、ESG投資やSDGs経営に取り組む企業ほど、人権対応をリスク管理の一環として重視する傾向が高まっています。

■ 社内にも効果あり。「人が辞めにくい会社」へ

人権対応は社外へのリスク対応だけでなく、社内の職場環境改善や人材定着にもつながります。

  • ハラスメント防止や働きやすい環境づくりが進む
  • 多様な人材が活躍できる土壌が整う
  • 離職率の低下やエンゲージメント向上につながる

つまり、「人を大事にする会社」は、“働きたいと思われる会社”にもなっていくのです。

■ 何から始める? 小さな一歩からでOK

「とはいえ、何から手をつければいいのか分からない…」
そんなときは、次のような“小さなアクション”から始めてみてください。

  • 社内報やイントラネットで人権をテーマにした記事を掲載する
  • 啓発ポスターやイラストで社内の意識づけを行う
  • 関係部署と人権リスクについて情報交換をしてみる

人権対応に「正解」や「ゴール」はありません。
だからこそ、まず“動いてみること”が何より大事な一歩です。

■ おわりに|人権は、リスクではなく“信頼の土台”

人権に向き合うことは、単にリスクを回避するためだけではありません。
誰かが安心して働けること、商品やサービスが信頼されること──
それらを支える企業と社会の関係性の“土台”が人権なのです。

「ビジネスと人権」5回シリーズ、いかがでしたでしょうか。
皆さまが自社の人権対応やリスク管理を考えるきっかけになれば幸いです。

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