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◆ビジネスと人権【第3回】「人権方針ってどう作る?」― トップの姿勢と、伝わる言葉からはじめよう

人権方針ってどう作る?」 トップの姿勢と、伝わる言葉からはじめよう

「人権に配慮しています」と言葉にするのは簡単です。
でも、言うだけでは不十分で、それを“企業としてどのように表明し、どう行動していくのか”を明文化したものが、「人権方針」です。

今回は、「人権方針とは何か?」「策定のポイントは?」といった基本を、わかりやすく解説します。

■ 人権方針とは? なぜ企業に必要なのか

企業にとっての人権方針とは、「わたしたちは人権を大切にする会社です」と社内外に約束する“宣言文”のようなものです。

なぜ今、人権方針が必要とされているのでしょうか?

  • 社員や取引先に「どのような姿勢で行動してほしいか」の指針になる
  • 社外から「人権対応はどうなっていますか?」と問われた際の説明材料になる
  • リスクが起きたとき、方針をもとに対応できる

つまり、人権に関する取り組みを言葉で可視化することで、信頼とリスク回避の両方につながるのです。

■ 小規模企業でも対象に。人権方針は規模を問わない

「うちは小さい会社だから…」
「海外取引はないし…」

そんな声もありますが、人権方針の策定は、企業規模に関係なく求められるようになっています。

むしろ、シンプルでも方針を掲げることで、社内の意識を整える出発点になります。
経済産業省の調査でも、国内企業の7~8割が人権方針を定めているという結果が出ています。

■ 国連指導原則が示す「人権方針の5つの要件」

では、どんなことに気をつけて人権方針を策定すればよいのでしょうか。
参考になるのが、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」が示す以下の5つの要件です。

要件内容
① トップの承認経営陣が内容を理解し、責任をもつ
② 情報にもとづく策定社会課題・専門家の知見などを取り入れる
③ 関係者の期待を明記ステークホルダーへの姿勢を示す
④ 社内外への公表社内報やWebで共有・公開する
⑤ 方針の反映実際の業務や行動に落とし込む

この中で特に重要なのが「①トップの承認」と「④社内外への公表」です。

■ 経営トップの姿勢が、企業の人権意識をつくる

「人権を尊重します」という言葉は、誰でも言えます。
でも、それを経営トップがしっかり語り、社内外に発信するかどうかで、伝わり方はまったく変わります。

たとえば──

  • 経営メッセージや社長挨拶に「人権への姿勢」を明記する
  • 社員向け動画やeラーニングで方針を説明する
  • 会社案内や営業資料にも記載し、社外へも発信する

こうした形で“企業としての意思”を見せることが、社員や取引先の行動変化につながります。

■ 社内外への「周知」で、方針が生きる

人権方針は、「策定して終わり」ではありません。
関係者に伝わってはじめて、意味が生まれます。
だからこそ、社内外でどう周知するかが大切です。

社内では──

  • 朝礼や会議で紹介する
  • 「人権方針カード」など配布物の活用
  • eラーニングやイントラを通じて継続的に伝える

社外では──

  • 会社ホームページで公開する
  • 採用情報や取引案内に掲載する
  • 問い合わせ対応に備えて資料を整備しておく

すべての人が「自分がどう行動すればよいか」を理解できれば、関わる人たちも安心して行動できるようになります。

■ おわりに|美辞麗句より、伝わる言葉・誠実な姿勢を

人権方針というと、専門用語や抽象的な表現で書かれているものも多く、最初は難しく感じるかもしれません。

でも本当に大切なのは、誰にでも伝わる、誠実な姿勢です。

たとえば──

「私たちは、誰かの権利を犠牲にするような働き方はしません」
「働く人、お客様、地域の人々のことを考えて行動します」

こうしたまっすぐな言葉こそ、人権方針の“土台”になるのではないでしょうか。

次回は、その人権方針を「具体的にどう活かすか」──
“人権デューディリジェンス(人権リスク調査)”という考え方についてご紹介します。

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