企業にとっての人権方針とは、「わたしたちは人権を大切にする会社です」と社内外に約束する“宣言文”のようなものです。
なぜ今、人権方針が必要とされているのでしょうか?
つまり、人権に関する取り組みを言葉で可視化することで、信頼とリスク回避の両方につながるのです。
「うちは小さい会社だから…」
「海外取引はないし…」
そんな声もありますが、人権方針の策定は、企業規模に関係なく求められるようになっています。
むしろ、シンプルでも方針を掲げることで、社内の意識を整える出発点になります。
経済産業省の調査でも、国内企業の7~8割が人権方針を定めているという結果が出ています。
では、どんなことに気をつけて人権方針を策定すればよいのでしょうか。
参考になるのが、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」が示す以下の5つの要件です。
要件 | 内容 |
---|---|
① トップの承認 | 経営陣が内容を理解し、責任をもつ |
② 情報にもとづく策定 | 社会課題・専門家の知見などを取り入れる |
③ 関係者の期待を明記 | ステークホルダーへの姿勢を示す |
④ 社内外への公表 | 社内報やWebで共有・公開する |
⑤ 方針の反映 | 実際の業務や行動に落とし込む |
この中で特に重要なのが「①トップの承認」と「④社内外への公表」です。
「人権を尊重します」という言葉は、誰でも言えます。
でも、それを経営トップがしっかり語り、社内外に発信するかどうかで、伝わり方はまったく変わります。
たとえば──
こうした形で“企業としての意思”を見せることが、社員や取引先の行動変化につながります。
人権方針は、「策定して終わり」ではありません。
関係者に伝わってはじめて、意味が生まれます。
だからこそ、社内外でどう周知するかが大切です。
社内では──
社外では──
すべての人が「自分がどう行動すればよいか」を理解できれば、関わる人たちも安心して行動できるようになります。
人権方針というと、専門用語や抽象的な表現で書かれているものも多く、最初は難しく感じるかもしれません。
でも本当に大切なのは、誰にでも伝わる、誠実な姿勢です。
たとえば──
「私たちは、誰かの権利を犠牲にするような働き方はしません」
「働く人、お客様、地域の人々のことを考えて行動します」
こうしたまっすぐな言葉こそ、人権方針の“土台”になるのではないでしょうか。
次回は、その人権方針を「具体的にどう活かすか」──
“人権デューディリジェンス(人権リスク調査)”という考え方についてご紹介します。