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◆ビジネスと人権【第1回】“ビジネスと人権”ってなに?企業として知っておきたい「人権」の基本


こんにちは。
東京文京区 護国寺 の 文字校正が得意なデザイン会社、株式会社ユー・エス・エスです。

最近、「ビジネスと人権」という言葉を耳にすることが増えてきました。
ニュースや海外の報道などで目にする機会もありますが、企業にとってどう関係しているのか、いまひとつピンとこない方も多いのではないでしょうか。

このブログでは、そんな“これから知りたい”方のために、やさしい言葉で「ビジネスと人権」の基本を解説していきます。

■ 企業活動と“人権”のつながり

「人権」と聞くと、個人の自由や尊厳、差別や戦争といった問題を思い浮かべるかもしれません。でも最近では、企業が行う製品開発・販売・雇用・仕入れなど、あらゆるビジネス活動の中にも、“人権に関わる場面”があると考えられています。

たとえば──

  • 海外の工場で働く労働者の労働環境
  • 誰かの強制労働に支えられた製品が市場に出てしまう
  • 社内でのハラスメントや差別の未対応

こうした問題は、「知らなかった」ではすまされない時代です。
企業の信用・ブランド・取引関係にまで影響を及ぼすことがあります。

■ 国際社会に進む「企業の人権責任」の明確化

企業に対する人権尊重の要請が強まった背景には、2011年に国連が採択した「ビジネスと人権に関する指導原則(UNGPs)」の存在があります。これは、企業が守るべき「ルール」というより、“どう行動すればよいか”を示したガイドラインのようなものです。
この原則では、ビジネスと人権の関係について以下の3つの柱が示されています。

🌍 ビジネスと人権の3本柱

柱の名前内容
① 国家の義務国が人権を守る制度・法律を整備し、実効性を確保すること
② 企業の責任企業が人権を尊重し、侵害を回避・是正する責任を持つこと
③ 救済の手段人権侵害を受けた人が適切な救済措置を得られること

この中でも、企業が特に意識すべきは「② 企業の責任」です。

■ 実例から学ぶ:企業の「知らなかった」が通用しない現実

たとえば、あるアパレル企業が委託した工場が、さらに再委託した先で、外国人技能実習生が長時間働かされていた──というケースがありました。

この企業は、直接契約していないという理由で最初は静観していたものの、NPOや報道により社会問題化。最終的には社会的批判の高まりを受け、支援金の拠出や対応策を講じることとなりました。

こうした例は、特定の業界に限らず、どんな業種・業界でも起こりうるものです。
しかも、企業に対して「あなたのところはどう対応するのか?」と問われるのは、何か問題が起きた“あと”です。

■ サプライチェーン全体が「企業の人権姿勢」とみなされる時代

最近では、企業が提供する製品・サービスにとどまらず、その背景にある「サプライチェーン」全体が、人権に配慮しているかどうかを問われるようになっています。

自社で直接雇用している人だけでなく、海外の仕入れ先や委託先、物流会社なども含めて、“人権への姿勢”が評価の対象になっているのです。

特に欧州では法制化が進んでいて、日本企業であっても、取引先から人権デューデリジェンス(人権に関する調査やリスク評価)を求められるケースが増えています。

■ 企業として「何から始めるべきか」に迷ったら

こうした状況を踏まえて、日本でも2020年に「ビジネスと人権に関する行動計画(NAP)」を策定し、企業に向けたガイドラインが整えられてきました。

しかし、実際には、「何をすればいいかわからない」「どこから手をつけるべきか迷っている」という声もよく聞きます。

実際のところ、難しい制度を整える前に、“人権とは何か”を社内で共有し、小さな工夫から始めるだけでも大きな一歩です。

制度や仕組みの整備も大切ですが、まずは「人権とは何か」を社内で共通認識にすることが出発点になります。

たとえば次のような取り組みから始めてみるのも効果的です

  • 社内報やイントラネットでわかりやすく伝える
  • 社員研修や朝礼でトピックに取り上げてみる
  • 難解な表現を図解やイラストで置き換える

こうした“伝え方”の工夫も、企業の人権対応の第一歩です。

■ おわりに|人権を「伝える力」も企業の責任

企業にとって人権とは、“誰かのために守るべきもの”であると同時に、
“自分たちが問われるもの”でもあります。

だからこそ、制度やルールを整える前に、まずは「人権を伝えること」が大切です。

私たちも、そうした“伝え方”に向き合いながら、日々お手伝いをしています。
次回は、「サプライチェーンと人権リスク」について、さらに深く掘り下げていきます。

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