こんにちは。
東京文京区 護国寺 の 文字校正が得意なデザイン会社、株式会社ユー・エス・エスです。
最近、「ビジネスと人権」という言葉を耳にすることが増えてきました。
ニュースや海外の報道などで目にする機会もありますが、企業にとってどう関係しているのか、いまひとつピンとこない方も多いのではないでしょうか。
このブログでは、そんな“これから知りたい”方のために、やさしい言葉で「ビジネスと人権」の基本を解説していきます。
「人権」と聞くと、個人の自由や尊厳、差別や戦争といった問題を思い浮かべるかもしれません。でも最近では、企業が行う製品開発・販売・雇用・仕入れなど、あらゆるビジネス活動の中にも、“人権に関わる場面”があると考えられています。
たとえば──
こうした問題は、「知らなかった」ではすまされない時代です。
企業の信用・ブランド・取引関係にまで影響を及ぼすことがあります。
企業に対する人権尊重の要請が強まった背景には、2011年に国連が採択した「ビジネスと人権に関する指導原則(UNGPs)」の存在があります。これは、企業が守るべき「ルール」というより、“どう行動すればよいか”を示したガイドラインのようなものです。
この原則では、ビジネスと人権の関係について以下の3つの柱が示されています。
🌍 ビジネスと人権の3本柱
柱の名前 | 内容 |
---|---|
① 国家の義務 | 国が人権を守る制度・法律を整備し、実効性を確保すること |
② 企業の責任 | 企業が人権を尊重し、侵害を回避・是正する責任を持つこと |
③ 救済の手段 | 人権侵害を受けた人が適切な救済措置を得られること |
この中でも、企業が特に意識すべきは「② 企業の責任」です。
たとえば、あるアパレル企業が委託した工場が、さらに再委託した先で、外国人技能実習生が長時間働かされていた──というケースがありました。
この企業は、直接契約していないという理由で最初は静観していたものの、NPOや報道により社会問題化。最終的には社会的批判の高まりを受け、支援金の拠出や対応策を講じることとなりました。
こうした例は、特定の業界に限らず、どんな業種・業界でも起こりうるものです。
しかも、企業に対して「あなたのところはどう対応するのか?」と問われるのは、何か問題が起きた“あと”です。
最近では、企業が提供する製品・サービスにとどまらず、その背景にある「サプライチェーン」全体が、人権に配慮しているかどうかを問われるようになっています。
自社で直接雇用している人だけでなく、海外の仕入れ先や委託先、物流会社なども含めて、“人権への姿勢”が評価の対象になっているのです。
特に欧州では法制化が進んでいて、日本企業であっても、取引先から人権デューデリジェンス(人権に関する調査やリスク評価)を求められるケースが増えています。
こうした状況を踏まえて、日本でも2020年に「ビジネスと人権に関する行動計画(NAP)」を策定し、企業に向けたガイドラインが整えられてきました。
しかし、実際には、「何をすればいいかわからない」「どこから手をつけるべきか迷っている」という声もよく聞きます。
実際のところ、難しい制度を整える前に、“人権とは何か”を社内で共有し、小さな工夫から始めるだけでも大きな一歩です。
制度や仕組みの整備も大切ですが、まずは「人権とは何か」を社内で共通認識にすることが出発点になります。
たとえば次のような取り組みから始めてみるのも効果的です
こうした“伝え方”の工夫も、企業の人権対応の第一歩です。
企業にとって人権とは、“誰かのために守るべきもの”であると同時に、
“自分たちが問われるもの”でもあります。
だからこそ、制度やルールを整える前に、まずは「人権を伝えること」が大切です。
私たちも、そうした“伝え方”に向き合いながら、日々お手伝いをしています。
次回は、「サプライチェーンと人権リスク」について、さらに深く掘り下げていきます。