
こんにちは。
東京文京区・護国寺にある、取材撮影・編集デザインから文字校正、印刷まで一貫対応できるデザイン会社、株式会社ユー・エス・エスです。
今日の東京は、まるで12月のような気温!
あわててセーターを引っ張り出し、体を温めるために朝から白湯をいただきました。
季節の変わり目でインフルエンザ等も流行っているようです。
みなさまもご自愛くださいね。
さて、今回は社名・人名の表記に気を配る広報担当者様に向けて、一文字の指摘からはじまった気づきをご紹介いたします。
先日、お客様の広報誌で「嚴島神社」の写真を表紙に使うことになったのですが、表紙の解説文を作るにあたり観光協会の公式サイトを参考にした文章を作成し、観光協会様に掲載許可をいただこうとご連絡したところ、「“厳島神社”ではなく、“嚴島神社”が正式表記です」とご指摘を受けました。
よく調べたところ、文字ひとつの違いが文化の重みを帯びることを実感しましたので、「旧字体」というテーマをきちんと整理しておこう――そう考えて、ブログ記事にまとめました。
まず、旧字体(旧字)とは、戦後の「当用漢字」制定以前に使われていた、もともとの漢字の形のことです。戦後、教育と印刷の簡便化・効率化のため、画数を減らした「新字体」が作られました。
| 旧字体 | 新字体 |
|---|---|
| 澤 | 沢 |
| 龍 | 竜 |
| 會 | 会 |
| 廣 | 広 |
| 德 | 徳 |
| 國 | 国 |
| 體 | 体 |
また、「𠮷(つちよし)」のように、常用漢字には含まれない旧字もあります。これは現在でも人名や地名で多く見られ、正式表記として尊重されています。つまり、旧字体は「難しい字」というよりも、文化的な“記憶”を映す文字なのです。
神社やお寺、老舗企業、伝統工芸などでは、いまも旧字が正式表記として使われます。これは単に「古いまま」ではなく、「由緒や信仰を受け継ぐ」という意思表示です。
たとえば、「嚴島神社」の“嚴”には、“厳か(おごそか)”や“つつしむ”といった意味があり、神域としての神聖さや清らかさをより強く伝えます。つまり、同じ「厳」でも、旧字の「嚴」には視覚的にも重みと格調が備わるのです。
一方で、人名や社名においても旧字が残る理由は同じです。たとえば「渡邊」「髙橋」「齋藤」など。「邊」や「髙」「齋」は、一族や家系の誇りの象徴として受け継がれています。
したがって、社内報などで表記を間違えると失礼にあたることがあります。「𠮷田」さんを「吉田」と印刷してしまう、というのは広報誌で起こりがちなミスです。一文字違うだけで、その人の“本来の名前”が変わってしまう――旧字の扱いには、敬意と確認が欠かせません。
次に、実務面でのポイントを見てみましょう。旧字体はフォントやシステムによって表示できない場合があります。たとえば、WordやExcelの設定やフォントによっては、「嚴」が「厳」に置き換わる、または□(豆腐)になることがあります。
さらに、実際の現場では旧字をめぐる相談が少なくありません。
このような間違いは印象や信頼に直結します。そのため、初校段階で氏名・地名の表記チェックリストを整備し、責任者がダブルチェックする体制が重要です。
また、旧字を正しく使うことで、デザイン全体の格が上がります。「金澤」「祇園」など、旧字の美しさは紙面の世界観を引き締めます。したがって、フォントや書体の選び方次第で、読み手に「文化の厚み」を感じさせることができるのです。
旧字体は単なる「昔の字」ではなく、文化や歴史を伝えるデザインの一部です。「嚴島神社」の“嚴”が象徴するように、一文字の選択がブランドの価値を左右します。つまり、社名・人名・地名の表記を正確に扱うことは、広報・デザインの基本であり、最も大切なマナーなのです。
旧字体は「戦前まで使われていた正式な字形」、異体字は「同じ意味で複数の書き方がある字」です。たとえば、旧(舊)、斎(齋)、崎(﨑)など。旧字=異体字ではありません。
まず相手の正式表記を確認しましょう。名刺やメール署名の通りに入力し、旧字が出ない場合は外字や画像代替も検討します。また、PDFで最終確認を行うと安心です。
見出しなど印象を与えたい箇所に限定して使うのがおすすめです。本文すべてを旧字にすると可読性が下がるため、意図を明確にして使い分けましょう。
公式サイト・観光協会・自治体資料などで確認できます。
ちなみに、嚴島神社は公式登録上も「嚴」の字を使用しています。
当社では、パンフレット・広報誌・社内報の制作において、お名前や地名に使われる旧字・異体字にも十分に配慮し、正確な表記を心掛けています。文字校正でお悩み担当者様、安心してご相談ください。