株式会社ユー・エス・エス/上田写真製版所 ブログ

ー豆知識
2025/11/5 2025/11/19

◆アメリカで咲いた日本の味。カリフォルニア米に込められた100年の努力

アメリカで咲いた日本の味。カリフォルニア米に込められた100年の努力
アメリカで咲いた日本の味。カリフォルニア米に込められた100年の努力

こんにちは。
東京文京区護国寺にある、広報誌の企画から取材撮影、編集デザイン、文字校正、印刷&Web展開までトータルでお手伝いしている株式会社ユー・エス・エスです。


2024年の夏、「令和の米騒動」と呼ばれるほど、スーパーの店頭からお米が消えました。
猛暑と不作が重なり、2025年に入っても価格は高止まり。
そんな中、輸入米の棚に並んだのが、カリフォルニア産コシヒカリです。

「外国産のお米なんて」「やっぱり国産が安心」——そう思う方も多いでしょう。
でも実は、そのカリフォルニア米、日本人がつくったものなんです。

今回のブログは、職場体験で来てくれた方が書いた原稿をもとに、USSスタッフが再構成しました。「お米」という身近なテーマから、異国で“日本の味”を咲かせた先人の挑戦をたどります。


海外で感じた「ホーム・フード・シック」

海外生活を経験した人にお米の話をすると、まずこう言われます。
「現地のお米がまずくてつらかった」と。

私もアメリカ生活をしていた時、それがいちばんの悩みでした。
「これから何年も、日本のお米を食べられないのか」と思うと、気が遠くなったものです。

そんな思いを、私は「ホーム・フード・シック」と呼んでいます。
母国の味を恋しく思う気持ち。
それは、海外生活を経験した人にしかわからないほど切ないものです。
むしろホームシックの多くは、このホーム・フード・シックが原因ではないかと思うほど。
それだけ、生まれ育った味の記憶は深く心に刻まれているのです。

カリフォルニアで出会った“日本の味”

そんな中、ある日スーパーで見つけた「カリフォルニア産コシヒカリ」。
「コシヒカリを名乗るなんて」と思いながらも、半信半疑で買ってみました。

そして、食べてみてびっくり。
おいしい。
本当においしいのです。

海外生活を送る身には、そのおいしさが涙が出るほどありがたく、懐かしく感じられました。
「これだ、日本の味だ」と。

なかでもお気に入りは「こうだファーム」の『こうださん』。
パッケージに写る日本人のおじいちゃんの写真に、どこか懐かしさを覚えて、我が家ではずっとそのお米を選んでいました。
白黒の古い写真を眺めながら、「この方は日系アメリカ人なのだろう」と思いました。

“ライス・キング”国府田敬三郎

調べると、あの写真の「こうださん」は、国府田敬三郎(こうだけいざぶろう)さんという人物でした。
カリフォルニアの地で、日本米と同じようにおいしいお米を作ろうと挑んだ日本人です。

日本で25歳のときに校長を務め、1920年に渡米。
カリフォルニア州サリナスで20年近く水稲の大規模生産技術を確立し、日本米と変わらぬ品質の「国宝ローズ」を開発しました。

戦時中は強制収容所に入れられ、戦後は農地を没収されるなど幾多の苦難に直面します。
それでも彼はあきらめず、州政府を相手に裁判を起こして農場を再建。
やがて全米一の稲作事業を築き上げ、“ライス・キング(米の王様)”と呼ばれるまでになりました。
まさにアメリカンドリームを体現した日本人です。

祖国の味を守り抜いた人たち

国府田さんが生きたのは、移民差別が根強く残る時代。
日系人たちは過酷な環境の中で畑を耕し、太平洋戦争中には強制収容所に送られた人も少なくありません。
それでも汗を流して働き、異国の地でおいしいお米を作りました。
そこに、日本人の誠実さと粘り強さがあります。

日本人がアメリカ社会で信頼を得てきたのは、ニンテンドーや大谷翔平選手の登場よりもずっと前から、日系人たちが地道に築いてきた努力の積み重ねによるものだと感じます。

「同胞が作ったお米」を忘れないで

かつてテレビ番組で、魚沼産コシヒカリとカリフォルニア産コシヒカリを食べ比べる街頭インタビューが行われたことがあります。
結果は意外なもので、多くの人が「カリフォルニア産の方がおいしい」と答えたのです。

それでも、「買うのは国産」と答えた人がほとんどでした。
理由は「国産の方が安心だから」「日本人が作っているから」。

けれど、そのカリフォルニア米を育てたのも、日本人の血を引く日系人たちです。
戦争や差別を乗り越え、異国の地で祖国の味を守り続けた人々。
その存在を、私たちは忘れてはいけません。

100年後の今、わたしたちにできること

国府田さんの功績は、ただ“おいしいお米”を作っただけではありません。
異文化の中でも努力を重ね、技術と誠実さで信頼を築いたこと。
それは日本の「ものづくり精神」と通じるものがあります。

私たちUSSも、デザイン・印刷・編集など、
日々の仕事の中でお客様の“伝えたい想い”を形にしています。
100年前の先人たちのように、誠実に、丁寧に、文化をつなぐ存在でありたい
——この物語は、そんな想いを改めて教えてくれました。

■Q&A

Q. カリフォルニア米は日本のお米とどう違うの?
A. 品種や気候の違いで粒の大きさや香りが少し異なりますが、国府田敬三郎さんが確立した「国宝ローズ」以降、日本米とほとんど変わらない品質を保っています。

Q. 日系人の歴史を知るおすすめの資料は?
A. 在米日本人会や「全米日系人博物館(Japanese American National Museum)」のサイトでは、戦前から現代までの日系人の歩みが詳しく紹介されています。

100年前、異国の地で「日本の味」を守り抜いた人がいました。
その一粒の努力を、私たちも受け継いでいきたいですね。

株式会社ユー・エス・エス(USS)
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