名古屋に住む従兄が、熱田神宮のお土産「きよめ餅」を持ってきてくれました!
実は先日、名古屋へ出かけた際に、熱田神宮へ参拝に行きたかったものの時間がなく、「残念だった、、、」とこぼした私の言葉を覚えていてくれたようで、「じゃあ、せめてお土産だけでも」と気を利かせて買ってきてくれたのです。
なんともありがたい従兄だなあと、手に取った瞬間から心が温かくなりました。
真っ白でやわらかな羽二重餅のなかに、なめらかなこしあんが包まれている「きよめ餅」。
ひと口かじれば、やさしい甘さがすっと広がり、つい「もう一つ」と手を伸ばしてしまう上品なお菓子です。表面には「きよめ」と焼印が押されていて、その姿もどこか凛として清らか。調べてみると、この銘菓は江戸時代の「きよめ茶屋」に由来し、参拝者が身を清め、ひと息つく甘味として長く親しまれてきたそうです。
ところで、熱田神宮は、創建およそ1900年と伝えられる古社ということをご存知でしょうか?
御神体として祀られているのは、日本神話に登場する「草薙剣(くさなぎのつるぎ)」。三種の神器のひとつが熱田の社に鎮まるという事実は、日本文化と信仰の厚みを今に伝えるものだと感じます。
三種の神器とは、八咫鏡(やたのかがみ)、八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)、そして草薙剣の三つ。天照大神が天孫降臨の際に授けたとされ、皇位継承の象徴として受け継がれてきました。剣は勇を示すとされ、古代から人々にとって特別な存在でした。
草薙剣の物語は、日本神話の名場面「ヤマタノオロチ退治」に登場します。素戔嗚尊(すさのおのみこと)が大蛇を退治したとき、その尾から現れたのが剣。これが天照大神に献上され、のちに日本武尊(やまとたけるのみこと)に授けられたと伝えられています。伝説の中で命を救ったことから「草をなぎ払う剣」と呼ばれるようになったそうです。
「実物は見られるの?」と思う方もいるでしょう。答えは「見られない」です。しかし、それこそが神器の神秘性。誰の目にも触れずに祀られることで、重みを保ち続けているのだと感じます。
熱田神宮の境内には、信長塀や大楠といった見どころがあります。
簡単にご紹介しますね。
熱田神宮といえば、戦国の覇者・織田信長との関わりも有名です。1560年の桶狭間の戦いに出陣する前、信長は熱田神宮で必勝祈願をしたと伝えられています。数で勝る今川義元を相手に奇跡的な勝利を収めたのち、神恩に感謝して寄進したのが「信長塀」です。
この塀は、土と石灰を油で練り固め瓦を厚く積み重ねたもので、今も境内に残り、国の重要文化財に指定されています。この塀の前に立つと、戦国の記憶がぐっと近く感じられそうです。
ここで少し余談を。
私の曾祖母は、織田家から嫁いできた方なんです。ほんのわずかですが、その血を受け継いでいると思うと、信長と熱田神宮の話題がどこか他人事ではなく思えてきます。
樹齢千年を超える御神木で、弘法大師が植えたと伝えられています。大きな幹に触れると、長い歴史を越えて人々を見守ってきた神秘を感じられると言います。従兄は、普段から実際にこの景色を目にしているのだと思うと、羨ましい気持ちとともに「次こそは自分の足で」と強く思いました。
今回は参拝こそ叶いませんでしたが、きよめ餅をいただいたことで熱田神宮の歴史や文化に触れることができました。草薙剣をめぐる神話、戦国武将との縁、千年の時を刻む御神木…。調べるほどに魅力が広がり、名古屋の地に息づく伝統の深さに驚かされます。
次に名古屋を訪れるときには、ぜひ熱田神宮へ。
従兄が歩いている参道を自分も歩き、信長塀を眺め、大楠に手を触れ、その空気を肌で感じてみたい。きよめ餅は、そんな未来へのきっかけをくれた特別なお土産でした。