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◆ビジネスと人権【第4回】「人権デューディリジェンスってなに?」 一度きりじゃない、継続して向き合うための仕組み

人権デューディリジェンスってなに?」 一度きりじゃない、継続して向き合うためのしくみ

「人権デューディリジェンス(人権DD)」という言葉、聞いたことはあるけれど、詳しい内容はよくわからない…という方も多いのではないでしょうか。
M&Aなどでよく聞く“デューディリジェンス”と混同されがちですが、人権DDは全く異なるものです。
今回は、“人権に配慮する企業活動の進め方”として注目されている「人権デューディリジェンス」について、わかりやすく解説します。

■ そもそも“デューディリジェンス”とは?

「デューディリジェンス(Due Diligence)」は、もともと「適切な注意義務」や「事前の調査」という意味を持つ言葉です。

M&A(企業買収)の場面では、買収する企業の財務状況やリスクを事前にチェックするプロセスのことを指しますが、
「人権デューディリジェンス」は、それとは目的も内容も異なります。

■ 人権デューディリジェンスは「PDCA型」の仕組み

人権DDは、「一度きりの調査」ではなく、“継続的にリスクを見直す仕組み”として考えられています。
具体的には、以下のようなサイクルで進めるのが基本です。

🔄 人権デューディリジェンスの基本サイクル(PDCA)

  1. リスクの特定
     自社・サプライチェーン内で、人権侵害が起こりうる場面を洗い出す
  2. 予防・是正策の実行
     問題が起きないように対策を講じ、発生した場合は適切に対応する
  3. モニタリング(継続的な評価)
     取り組みが機能しているか、定期的に確認する
  4. 情報開示・説明責任
     社内外に取り組み状況や課題を公表し、透明性を高める

このサイクルを繰り返しながら、“人権尊重が当たり前の状態”を目指していくのが、人権DDの役割です。

■ たとえば、どんな場面で使われる?

人権DDが求められる場面はさまざまですが、代表的な例を紹介します。

シーン想定される人権リスク企業のアクション例
海外の委託工場長時間労働・低賃金監査・ヒアリング・契約見直し
国内の派遣先ハラスメント・差別通報窓口の整備・研修の実施
自社内職場環境・育児介護との両立不足制度改定・柔軟な勤務体制の導入
災害時の対応要配慮者への支援不足備蓄品の見直し・訓練の実施

重要なのは、「想像力を持って、“影響を受ける人”の立場で考える」ことです。

■ 完璧でなくてもいい。開示して“誠実に進める姿勢”を

「すべてをチェックするのは大変」「データも揃っていない」
そんな声も少なくありません。でも、完璧である必要はないのです。

むしろ──

  • 取り組みの途中でも、誠実に開示する
  • できていないことは「これから取り組む」と示す
  • 専門家や外部の知見を取り入れながら、小さく始める

こうした透明性のある姿勢が、企業への信頼や安心につながります。

海外では、企業が人権への取り組みを公表することが“当たり前”になりつつあります。
日本企業にも「進捗を開示する文化」が、今後求められていくでしょう。

■ おわりに|人権リスクは「日常の中」にある

人権というと、大きな問題のように思えますが、
実は日常の働き方や制度、取引の仕方など身近な選択の中に人権リスクが潜んでいます。

人権デューディリジェンスは、そうした視点を日常業務に根づかせるための仕組みです。

次回の最終回では、「ビジネスと人権の経営的な意味」──
なぜ人権への取り組みが企業のリスク管理や成長戦略につながるのかをお届けします。

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